「庭に生えている苔は食べれるのか?」と考えたことはありませんか。身近な存在でありながら、その実態はあまり知られていません。一般的に気持ち悪いという印象を持つ方もいますが、実は食用のゼニゴケに関する研究や、驚くべき活用法も存在します。

この記事では、苔には毒性があるのか、ゼニゴケや水苔は食べられるかといった疑問に答えていきます。さらに、苔の栄養価や健康への効果、苔料理専門店の取り組み、食用苔の見分け方、そして苔の採取は違法かといった法律面まで、網羅的に解説します。
苔を食用とする際の注意点を理解し、安全に楽しむための知識を深めていきましょう。
この記事で分かること
- 食べられる苔と食べられない苔の種類
- 苔を食べる際の具体的な注意点や法律
- 研究が進む食用苔の栄養価や活用法
- 苔が持つ意外な魅力や可能性
巷の疑問「苔は食べれるのか」を徹底解説

- 庭の嫌われ者?苔が気持ち悪い理由
- 結論として苔には毒性があるのか?
- ゼニゴケや水苔は食べられるか専門家が解説
- 研究が進む食用ゼニゴケの可能性
- 苔の栄養価や健康への効果は?
- 驚きの活用法!ジャゴケ料理の世界
庭の嫌われ者?苔が気持ち悪い理由
多くの方が苔、特にゼニゴケに対して「気持ち悪い」という印象を抱くのには理由があります。庭や植木鉢の表面に、まるで張り付くように広がる姿が主な原因です。このベタッとした見た目や、剥がした裏側に生えている毛(仮根)が、生理的な嫌悪感を引き起こすことがあります。

また、ゼニゴケは非常に繁殖力が強く、一度生えると駆除が難しい点も嫌われる一因でしょう。日陰や湿った場所を好み、気づけば広範囲を覆ってしまうため、園芸愛好家からは厄介な雑草として扱われることも少なくありません。このように、見た目の不快感と、駆除の難しさが、ゼニゴケが「嫌われ者」と呼ばれる主な理由です。
しかし、視点を変えて「コケ目線」で観察すると、ゼニゴケが春や秋につけるヤシの木のような傘(雌器托)は、まるでミニチュアの森のようで、意外な魅力に気づかされることもありますよ。
結論として苔には毒性があるのか?

「苔には毒性があるのでは?」という疑問は、苔を食べる上で最も気になる点の一つです。結論から言うと、現時点で「食べると死に至るような猛毒を持つ苔」は、日本国内では発見されていません。
ただし、「毒性がない」と「安全に食べられる」は同義ではないため、注意が必要です。
自然界の苔は、生き抜くために虫や病原菌から身を守るための化学物質を含んでいる場合があります。これらが人間にとって有害なアレルギー反応を引き起こしたり、腹痛の原因になったりする可能性は否定できません。
野生の苔を食べるリスク
野生の苔には、どんな物質が含まれているか分かりません。例えば、車の排気ガスに含まれる重金属や、農薬などを吸収している可能性も考えられます。また、寄生虫や細菌が付着しているリスクも高いため、安易に野生の苔を採取して口にすることは絶対に避けるべきです。
このように、苔自体に強い毒性はないとされていますが、生育環境や種類によっては健康を害する恐れがあるため、食べる際には専門的な知識と慎重な判断が求められます。
ゼニゴケや水苔は食べられるかを詳しく解説

では、具体的な種類としてゼニゴケや水苔は食べられるのでしょうか。これらは種類や条件によって扱いが大きく異なります。
水苔(ミズゴケ)の食用例
一部の地域では、ミズゴケを天ぷらにして食べる文化があったという記録があります。アク抜きなどの下処理をすれば食べられるとされていますが、これも全てのミズゴケが安全であるという保証はありません。あくまで特殊な食文化の一例として捉えるのが賢明です。
ゼニゴケは「条件付き」で食べられる
前述の通り、庭に生えている野生のゼニゴケは、防衛のために不味成分や有害になりうる物質を蓄えているため、食用には適しません。しかし、研究室のような管理された環境で育てられたゼニゴケは食用になる可能性を秘めています。
ストレスのないクリーンな環境で栽培されたゼニゴケは、有害成分を作らないため、野菜のように食べられることが分かってきました。この違いを理解しておくことが非常に重要です。
項目 | 野生のゼニゴケ | 研究室栽培のゼニゴケ |
---|---|---|
安全性 | 有害物質や汚染の可能性があり危険 | クリーンな環境で栽培され安全 |
味 | 苦みやえぐみが強く、まずい | レタスのような食感で、クセがないとされる |
入手方法 | 庭や公園などで自生 | 一般には流通していない(研究段階) |
研究が進む食用ゼニゴケの可能性

現在、食用としてのゼニゴケの研究が一部で進められています。特に、神戸大学の石崎公庸教授らの研究室で栽培されているゼニゴケは、食品としての大きな可能性を秘めていると注目されています。
安全な環境で特別な方法で育てられたゼニゴケは、生で食べるとレタスのようなシャキシャキ感があり、試食した人々の間でも評判が良いと報告されています。活用法として、天ぷらやクッキー生地への練り込み、オムレツの具材などが考案されており、乾燥チップスは海苔のような風味があるとのことです。
食用ゼニゴケの栄養価に関する情報
研究段階の情報によると、食用ゼニゴケにはビタミン、ミネラル、食物繊維が豊富なほか、健康維持に役立つとされるEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)といった油分も含まれているという報告があります。特に鉄分はホウレンソウの25倍以上とも言われ、今後の研究成果が期待されます。(参照:信頼できる科学情報源や大学の研究報告)
ただし、これらの情報はあくまで研究室レベルでの話です。一般のスーパーマーケットなどで食用ゼニゴケが販売されるまでにはまだ数年かかる見込みであり、現時点では私たちが手軽に入手することはできません。
苔の栄養価や健康への効果は?

食用として研究されている苔には、どのような栄養価や効果が期待できるのでしょうか。
まず、食用ゼニゴケについては、前述の通り、鉄分やEPA、DHAといった栄養素が豊富に含まれる可能性が示唆されています。これらは現代人に不足しがちな栄養素であり、新たな健康食材としての活用が期待されます。
一方で、食用への挑戦が行われている「ジャゴケ」という苔には、マツタケと同じ香り成分である「マツタケオール」が含まれていることが分かっています。この独特の香りを活かした料理開発が進められていますが、栄養面での特筆すべき点はまだ研究途上です。
また、苔全般に豊富に含まれる「葉緑素(クロロフィル)」には、コレステロール値を下げる効果や抗酸化作用があると言われています。しかし、これらの効果は特別なものではなく、ホウレンソウやブロッコリーといった緑黄色野菜からも十分に摂取可能です。あえて苔から摂取する必要性は、現時点では低いと言えるでしょう。
驚きの活用法!ジャゴケ料理の世界

食用苔の中でも特にユニークなのが、ジャゴケ(蛇苔)を活用した料理への挑戦です。ジャゴケはその名の通り、蛇の鱗のような模様が特徴で、人によってはゼニゴケ以上に「気持ち悪い」と感じるかもしれません。
しかし、このジャゴケは松葉やマツタケに似た爽やかな香りを持っており、この香りを活かせないかと考える人々が現れました。その中心となっているのが、「コケを食べる会」というグループです。プロの料理人も交え、ジャゴケを美味しく食べるための研究開発が地道に行われています。
「コケを食べる会」が考案したジャゴケ料理
これまでに数々の試作と試食会が繰り返され、以下のようなユニークなメニューが考案されてきました。
- ジャゴケをバンズに練り込んだ「MOSSバーガー」
- ジャゴケの香りを移した「ジャゴケペペロンチーノ」
- デザートとしての「ジャゴケ寒天」
- ジャゴケの香りを抽出したアルコール飲料
当初期待されたマツタケの代替としての活用は、調理過程で香りが飛んでしまうという課題があり、まだ研究が必要な段階です。しかし、苔の新たな可能性を切り拓く魅力的な取り組みと言えます。
苔は食べれるのか?実践前の注意点

- 苔料理専門店のコケバーガーとは
- 食用と観賞用の苔の見分け方
- 注意!苔の採取は違法になる?
- 結論:苔は食べれるのか慎重な判断を
苔料理専門店のコケバーガーとは

「苔料理専門店」という言葉を聞くと驚くかもしれませんが、これは前述の「コケを食べる会」の活動から生まれた、いわばコンセプトのようなものです。常設の店舗があるわけではなく、イベントや出版物を通じて苔料理の魅力を発信しています。
その中でも代表作と言えるのが「MOSSバーガー(モスバーガー)」です。大手ハンバーガーチェーンとは関係なく、苔(MOSS)とかけて名付けられました。このバーガーの最大の特徴は、ジャゴケの粉末を練り込んだ特製のバンズにあります。よく噛むと、ジャゴケ特有の爽やかな風味が感じられるそうです。
「コケを食べる会」は、2019年には出版記念パーティーを開催し、MOSSバーガーセットを含む数々のジャゴケ料理をお披露目しました。苔玉や苔庭をイメージした盛り付けなど、見た目にも楽しい工夫が凝らされており、苔への深い愛情が感じられますね。
このように、MOSSバーガーは一部の愛好家や研究者の間で楽しまれている実験的な料理であり、一般のレストランで気軽に注文できるメニューではないのが現状です。
食用と観賞用の苔の見分け方

「食べられる苔と、そうでない苔をどう見分ければ良いのか」という点は非常に重要ですが、残念ながら初心者が見た目だけで安全に判断できるような、単純な見分け方は存在しません。
食用に適するかどうかは、苔の種類(種レベルでの同定)と、その苔が育った環境によって決まります。例えば、同じゼニゴケでも、研究室でクリーンに栽培されたものと、道端に生えているものでは安全性が全く異なります。
自己判断による採取・実食は絶対にNG
苔の世界は奥深く、よく似た種類もたくさんあります。中にはアレルギー物質を含むものや、有毒なキノコ・地衣類が一緒に生えていることもあります。専門家でもない限り、野生の苔を「これは食べられる種類だ」と自己判断して食べることは極めて危険です。絶対におやめください。
結論として、安全な食用苔は「食用として管理・栽培され、販売されているもの」に限られます。観賞用の苔と食用の苔を自分で見分けることは不可能に近いと考え、観賞は観賞、食は食として完全に分けて考えることが賢明です。
注意!苔の採取は違法になる?

もし食用に適した苔を見つけたとしても、それを自由に採取して良いわけではありません。苔の採取には法律が関わってくるため、注意が必要です。
土地の所有権が重要
原則として、植物はそれが生えている土地の所有者に帰属します。つまり、他人の私有地(庭、山林など)に生えている苔を無断で採取する行為は、窃盗罪にあたる可能性があります。必ず土地の所有者から許可を得る必要があります。
公園や保護地域での採取
国定公園や国立公園、その他自然保護が定められている地域では、法律によって植物の採取が厳しく禁止されている場合がほとんどです。違反した場合は罰則が科されることもありますので、安易な気持ちで採取することは絶対にできません。
苔を採取する前の確認事項
- その場所は誰の土地か?(私有地、公有地、保護地域など)
- 私有地であれば、所有者の許可は得ているか?
- 公園や保護地域の場合、採取が許可されているか条例等を確認したか?
このように、たとえ道端の苔であっても、その土地のルールを確認せずに採取する行為はトラブルの原因となります。食用目的であれ観賞目的であれ、採取を行う際はルールとマナーを守ることが不可欠です。
結論:苔は食べれるのか慎重な判断を

- 日本国内で猛毒を持つ苔は発見されていない
- しかし野生の苔には有害物質や寄生虫のリスクがある
- 安易に野生の苔を食べるのは絶対に避けるべき
- 一部地域ではミズゴケを天ぷらにする食文化があった
- 食用として研究されているのは主にジャゴケとゼニゴケ
- ジャゴケはマツタケと同じ香り成分を持つ
- 「コケを食べる会」がジャゴケ料理を研究開発している
- 代表的な料理にジャゴケを練り込んだMOSSバーガーがある
- 野生のゼニゴケは食用に適さない
- 研究室でクリーンに栽培されたゼニゴケは食用になる可能性がある
- 食用ゼニゴケは栄養価が高いと期待されているが一般には未流通
- 苔の栄養素は緑黄色野菜からも摂取可能
- 初心者が見た目で食用苔を見分けるのは不可能
- 他人の土地で苔を無断採取すると窃盗罪になる恐れがある
- 公園や保護地域での植物採取は法律で禁止されていることが多い
いかがでしたか?このサイトでは苔に関する情報を幅広く発信していきます。
無限の可能性を秘めた身近な植物、苔。
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